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323年前の難問「モリニュー問題」 視覚と触覚の感覚が解決される [<健康NEWS>]


 モリニュー問題とは、323年前にアイルランドの政治家ウィリアム・モリニュー(William Molyneux)が、哲学者ジョン・ロック(John Locke)に宛てた「先天的に目が見えず、球体と立方体を触覚によって区別していた人が、突然目が見えるようになった場合、手を触れずに球体と立方体を見分けることができるか」というものです。

 これは一口に言うと「経験論」vs「生得論」の問題なのだそうです。後天的に見つけたものか、先天的に備わっているものか、ということです。
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 ロックのような「経験論者」は、人間はまったく何も知らない状態で生まれると考え、人間とは経験の総体だとみなす。

 一方、「生得論者」は、人間には特定の観念が生まれつき備わっていて、視覚や聴覚、触覚によってそれらの観念が起動されるという立場を取る。すなわち、生まれつき目が見えなかった人が突然見えるようになって、すぐに球体と立方体を見分けられれば、その知識は人間に生まれつき備わっていたものだということになる。

 「モリニュー問題の素晴らしい点は、表象がどのように脳内で構築されるのかという疑問に通じるところだ」と、MITのパワン・シンハ(Pawan Sinha)氏は語った。
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 というわけで、実際に実験をして解決してしまおうということに。科学の発達というものは凄いものです。
 被験者は生まれつき目が見えない人で、さらに手術によって目が見えるようになることが可能な人が選ばれました。(8歳から17歳の男女)
 そして結果は、
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 研究チームは、レゴブロックのような物体を使い、視覚を取り戻した被験者たちに、視覚だけで類似する形を判別させた。すると、ほぼ100%の確率で、似た形を選ぶことができた。触覚だけで同じ実験をした場合も、同じ結果となった。

 次に研究チームは、被験者にまず物体を「触らせた」上で、次に物体を「見せ」、触った物体と似た形の物体を視覚によって選ぶよう求めた。すると、単なる推測と変わらない低確率でしか似た形を選ぶことはできなかった。

 「彼らは(視覚と聴覚とを)つなげることができなかった」と、MITのユーリ・オストロブスキー(Yuri Ostrovsky)氏は説明した。「求められた行動を遂行するためのクロスモーダルな(感覚が統合された)表象は形成されなかった」

 モリニュー問題の回答はつまり、「ノー」だった。少なくとも、視覚を取り戻してすぐには無理だということが示された。
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 視覚ー>視覚、触覚ー>触覚の場合は同じモノを選ぶことができました。
 けれども、触覚ー>視覚で選ぶ場合は同じモノを選ぶことができませんでした。(触ったモノが目で見て同じモノかどうかは区別できない)
 よって、触覚で感じたモノと視覚で見たモノが一致するという感覚(視覚能力)には経験が必要になるようです。
 しかし、一週間くらいで、触覚=視覚で同じモノを判断できるようになりました。
 よって、3,4歳まで全盲ならば視覚能力を永遠に失うであろう「視覚の臨界期」という医学的定説を覆すことができるかもしれません。今回の実験では、視覚を取り戻せば、人間の脳は柔軟に経験を積むことで視覚能力を取り戻すことができる、ということになります。
 モリニュー問題は、脳の可能性についても、医学会の定説に新たな挑戦をつきつけることになったようです。



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